男子校で働くのってどう?【女性教員として答えます!】

私学を検討している方の選択肢の一つに入る「男子校」。ですがネットで検索してみても,いまひとつまとまった情報が載っていない。さあ困った…ということで本記事に漂着された,そこのあなた!

…開幕から飛ばしてしまい,すみません😆

今回は「実際男子校って働きやすい?生徒たちはどんな感じ?」といった疑問点に,まるっと・がばっとお答えします!(忖度はしておりません。)女性の方にも役立つ内容にしたので,良ければご覧くださいませ。

ぶろっさむ
ぶろっさむ

男子校を数多くある志望先の一つに加えて頂ければ,関係者として嬉しいです♪

女性教員はアイドル!?廊下で名前を連呼される

校風にもよるかもしれませんが,男子校という特性上,男性教員と女性教員の割合は9:2ほどです(ブログ主の肌感覚)。女性というだけで,良くも悪くも学校内で目立ちます。

勤務した一年目,生徒たちは私の名前を廊下や階段でところ構わず連呼していました。今でもそれは健在で,「本人でもたまにつっかえるフルネームをよく噛まずに言えたねぇ」と内心ニヤニヤしながら見守っております。

基本的に家庭や塾では勉強を頑張っている生徒が多く,甘える相手が周囲にあまりいない事情もあり、余計に女性教員という存在が珍しいようです。若手だともう毎回教室が大変なことになります(ソースはブログ主)。こうした生徒たちの環境要因を他の先生方から伺ってからは,「舐めている」というより甘えたいのかな,と思うようにしています。

生活指導が大変。「柳」のメンタルが必要

生徒の度を過ぎた言動や,道徳的に不義理な生活態度を見かけたら,こちらとしても注意せねばなりません。男子校ということは自動的に中高一貫であることを意味しますが,中学校の場合,業務の割合的には「生活指導>>>>>学習指導」の不等式で成り立っているんじゃないかという感覚があります(中3になるとだいぶ落ち着きます。勝負は中1後半〜中2です)。

当然,生活「指導」ですので,保護者への報告や生徒間の調停,学年団との共有,その後の経過観察などなどをこなす必要があります。しかも生徒によっては1,2回きつく言ったくらいでは聞かない子もいるので,先述した指導ルーティーンを何度か繰り返すことも少なくありません。保護者側が学校・教員に不信感を持たないよう,生徒だけでなく保護者も抜かりなくケアすることが求められます。

こちら側が懸命に奔走したにも関わらず,理不尽な結果に見舞われることもあります。そうした時に自責思考になると「病み/闇」の袋小路に陥りますので,対応する時の真摯さと同じくらいに,柳のようにかわすメンタルを保つことが大切になります。

ですので,もし「学習指導に力を入れたい!」「教科の専門性を高めることで生徒の学びに還元したい!」という想いの方が強いのであれば,高校配属にできないか,管理職の先生に打診してみることをおすすめいたします!

教科書通りの授業だと聞かない!(既にできる子が多いから)

ぶろっさむ
ぶろっさむ

この点が目下一番の悩みです…。

そのままの通りです。塾に通っている子たちが多いためか、生徒たちは授業を見る目が肥えています。逆に言えば,教科書レベルの内容は塾で既習済みという状態の子が大部分を占めているということです。「この子全然授業聞いとらんかったやん‼︎」というような子であっても,テストになるとそこそこの点数を取ってきたり,実力テストで初見の問題を出題しても,ある程度解けてしまったりします。

さらに,インターネットで自治体や教員向けのプラットフォームが公開しているような指導案についても同様です。私もお世話になっている手前恐縮ですが,こうした指導案の生徒像は,「学力的には中層くらいで,生徒間の凸凹が比較的少なめ」で設定されているものが多い印象です。しかも時間数もたっぷりめにもたせているので,生徒たちが教材に対して退屈を感じてしまう危険性もあります。そっくりそのまま試そうとしても,あまり上手くいきません。

こちら側の準備が教科書水準であれば,彼らは一瞬にしてそれを見抜き,「俺らの方が面白いんだぞ!」合戦をそこかしこで始めます。こうなってしまうと,どれだけ声を張り上げて注意を向かせようとしても,ほぼ不可能です(向こうも張り合おうとするので逆効果)。

むしろ,ちょっと専門的すぎるかな?という内容の方が食いつきが良いんですね。ですので,普段の授業づくりでも,できるだけ小話(脱線)多め,それに関するスライド多めで作るように心がけています。教科書の読みは彼らに任せる!くらいのスタンスがちょうど良いのかもしれません。

ちなみに,『新・男子校という選択』(2019)の中で,著者のおおたとしまさ氏が「よく効く授業のスタイル」は男女によって異なることを分かりやすく整理してくださっています。以下はそちらを私の方で表にまとめ直したものです。

男子の理解のしかた女子の理解のしかた
・いきなり「これできる?」と挑発
・はじめから答えを提示し,プロセス(式など)をじっくり考えさせる
理解度を細かく確認しながら難易度をアップ
「行間」から「登場人物の心情」を読み解くにはある程度の発達段階にならないと難しい比較的早い段階から「行間を読む」ことができる
全体のテーマ➡︎各段落の役割順番に読み,前後関係を押さえながら読解
おおたとしまさ(2019)『新・男子校という選択』日経プレミアシリーズ、pp.49-50.

もちろん,どちらの理解のしかたが優れているとか,全ての男子/女子がこの理解のしかたに当てはまる,といった単純な話ではなく,あくまで「傾向」として見られる男女間の指向性です。

それでも,これまで私が行ってきたような段階を踏んだ説明を退屈に感じた子が一定数いたのかもしれないな,と少なからず腑に落ちました。もし男女別学で指導法にお悩みの教員の方がいらっしゃったら,一読に値する著書ですのでぜひ!

男子校で働くメリット(今のところ)

ここまで「男子校で働くきつさ」を述べてきましたが,一方でメリットが全くないかというとそんなことはありません。むしろ先輩の先生方のお話を伺っていると,地域の公立校や他の私立校よりも働きやすいなと感じる側面もあります。その中で私が特に魅力的に感じているポイントは,次の3つです。

一つずつ見ていきましょう!

授業が自由に組める

4月初っ端に,国語科の上司の先生から放たれた衝撃の一言があります。

それは「授業は好きにやって良いよ。テストに間に合いさえすれば,誰も文句は言わないから😆」という言葉です。

というのも,私が教育実習をさせて頂いた学校さんでは,教科内で「こう指導してくださいね」という共通の解釈・見解が教材ごとに必ず設定されていたからです。確かに,テストの採点で教員間のばらつきを押さえて公平性を保つ上でもその方が効率的ですし,(授業者として面白いかは別として)理に適っていました。…その当時は。

1学期のうちはこなすのに精一杯でした。ただ,2学期以降すこ〜しずつ慣れてくると,「この話をはさんだら興味を持ってもらえるんじゃないか」「授業のコマが余ったし,今日はちょっと遊んでみるか!」といったように,メインの教材以外で工夫する余裕も生まれてきました。

「遊ぶように授業をする」領域に到達したいなと思い,日々試行錯誤しています。(実際,私の周囲は授業の中で「適度に遊ぶ」ことに長けていらっしゃる先生方が多く,尊敬しています。)

さらに本校では夏期・冬期それぞれに講習会があるのですが,どのようなテーマで講座を開くかは完全に個々の教員に任されています。私は古典文学史をやりましたが,実に多岐にわたる専門度(オタク度)高めな講座がありました。

  • 解剖学
  • 藍染め
  • 調理実習
  • くずし字

上に挙げたものはごく一部。こうした自主性に富んだ実践も非常に魅力に感じています。

もうすぐ1年が経とうとしている現在でも,授業や講習会が好きに組める=教員側の裁量が大きいことは最大の恩恵です。

新しい取り組みや企画が通りやすい(学校内外)

私学はその特性上,長く勤めるほどどうしてもマンネリ化します(なんで1年も勤続してないお前が言うねん,というツッコミは甘んじてお受けします)。

例えば私は学校内の有志の先生数名と,ゆるい勉強会のグループに参加しています。以下のようなトピックについて話し合ってきました。

10年後の教育でなくなること

10年後に向けて生徒に何を伝えるべきか

自分たちが作ってみたい授業,教材(生命倫理に関する教科横断的な授業)

さらに教員のみならず,生徒たちにも一定以上の自由が保証されています。

先輩のある先生曰く,校内の百人一首大会にハマった生徒の希望で「百人一首同好会」を立ち上げたこともあるそうです。生徒がやりたいと言ったことは,監督できる教員がいれば叶えてあげられる環境が整っているのは男子校(私学)の特徴ではないでしょうか。

またこうしたフレキシブルな職場環境は「副業のやりやすさ」にもつながります。現任校では学校外で活躍されている先生がたくさんいらっしゃり,お話を聞くのも楽しくワクワクします。「へぇ,そんなこともやって良いんだ!」と自分のキャリアの視野が広がる感覚は,公立校ではなかなか味わえないものだと思います。

女子生徒の目を気にせずのびのびできる!(生徒も教員も)

これは地味に重要な視点で,男子生徒にとってはもちろん,教員にとっても「女子生徒の視線がない」ことはアドバンテージになります。どういうことかというと…

まず生徒目線では,どんな愚行をしようが,どれほどマニアックな趣味に打ち込もうが,「あいつ,キモ〜い」と女子から言われることはありません。男子間では女子間に比べ,何かに卓越した子を見た時に「あいつはヤバい(すごい)」と称賛することはあっても,敬遠してその子を「ハブる」文化は生じにくいそうです。同性だからこそ,裸体ではしゃぎ回れるし,多感な思春期を存分に好きなように過ごせるというわけです。

一方教員目線ではどうでしょうか。実際に他校の共学さんから転任された先生からお聞きした話では「授業で全体を統率するためには,最初に女子の顔色や評判を気にしないといけない」そうです。授業直後に,教卓の脇を通りながら「全然わかんなかった」と露骨に吐き捨てる女子生徒もいたとか。

ぶろっさむ
ぶろっさむ

「むしろ男子生徒ばかりの環境の方が気楽かも」と考えが180°変化しました。

まとめ:慣れれば働きやすい!でも慣れるまでが過酷

Yahoo!知恵袋を見てみると,男子校に働きたいと考える女性の方と思われる質問者さんが過去に数名いらっしゃいました。ただ,「男子生徒と良からぬ関係になる」「若手の女性教員だと危険性が高い」「そもそもそんなに採用してもらえない」など,根拠があまりないような回答が多く見受けられたのが気にかかり,今回このテーマで書いた次第です。

男子校には,その性質上クセのある男児たちが集まります。しかし,だからこそ生徒たちも思いっきり学園生活を謳歌しており,それを実現する土壌としての教員の自由度が守られていると感じます。

女性教員は,男子生徒にとって「母親」とも「お姉さん」とも異なる,特異な立場にあります。言い換えれば,彼らが初めて母親以外の「女性」と密接に関わる人物が女性教員です。その意味で,男子校に勤務する(これからしようとしている)我々女性教員が提供し得る視座は未知数と言えます。

女性でなくとも,私学受験を考えている教員志望の方にとって「男子校」という新たな選択肢が少しでも有益に思えたのでしたら幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました